私が意見を述べるよりも、「ワッハ上方を作った男たち」の著者、毛馬一三氏に今回の橋下知事のテレビ等で報道されている内容について下記メッセージをいただいたので紹介します。
☆笑い殿堂「ワッハ上方」は?
毛馬 一三
ワッハ上方(大阪府立上方演芸資料館)が、新生橋下徹大阪府知事の下で、府行財政改革にからみ、「存続」が危ぶまれている。
橋下知事は、破綻同然の府財政を何とか再建するには、「収入の範囲内で予算を組む」しかないと、就任初府議会で宣言。そのためには府職員の人件費の大幅削減は勿論のこと、公共事業の見直しや図書館以外の府立施設の撤廃・売却などの検討をすると言い放った。
歴代知事が手を付けなかった財政改革に大鉈を奮い、明るい大阪府の未来を築きたいという決意表明には、新知事の熱意としてそれなりに伝わってくる。
2月17日、新知事は行動を開始し、早速「ワッハ上方」を視察している。その際、「上方お笑い殿堂」の役割には一応の理解を示したという。だが、<日経新聞「先望鏡」(中沢義則編集委員)によると、超多忙な知事の情報不足もあって、運営の問題点に関する質疑は、とんちんかんだった>という。
大阪府は「ワッハ上方」が入居しているテナントビルの賃借料を年間2億8千万円支払っている。当然知事は「値引き交渉はどうなっているのですか」と訊いたらしいが、賃借値下げ交渉の窓口は大阪府生活文化部なのに、当事者能力のない視察先のワッハに問い質している。
就任ホヤホヤの橋下知事の脳裏の中に「高賃借料」だけが去来し、それ自体が存続可否の判断基準になっているのは分からない訳でもない。
しかしどうしてそんな高額な賃借料を払って「ワッハ上方」を大阪府が開設したのは何故か、その秘めたる経過を、知事が分かった上で結論を出してらいたいと願う府民は増えつつある。
さて筆者は、2006年5月に小説「ワッハ上方を作った男たち」(西日本出版社刊)を出版している。この「ワッハ上方」の発想が芽生えた昭和63年9月から、完成した平成8年11月14日までの10年余の間、この立ち上げに携わった男たちの思いと流した汗の軌跡のドキュメントだ。
そこで、拙著の中で触れた、府の財政に絡む「賃貸料」のことを、ここで改めて触れておきたい。
テナントビルの主・吉本興業は、当時の大阪府の「大阪伝統文化の象徴お笑い資料館」を作りたいとのたっての懇請に共鳴して、投資した金額は、土地取得費約100億円、ビル建設費約50億円の計150億円だった。無借金の健全経営だった吉本興業は、これをなんと自社の転換社債発行で賄っている。大阪府に一切頼らなかったのである。
当時の吉本興業は、営業収入でみると平成5年度160億円、平成6年度191億円、平成7年度212億円と業績を順調に伸ばしているものの、平成4年度148億円の営業成績とほぼ同額の資金をここで調達することは、信じがたい決断だったことは明らかだ。
さらに驚くべきことは、いわば大阪府のオーダーメイドともいうべき新築ビルへの「ワッハ上方」の入居に、「保証金・敷金」を一切要求せず、オフィスビルの家賃以下という破格の条件で、同「笑いの殿堂」を受け入れたことだ。
これは上方文化の保存と振興を図る公的施設としての機能を永続させたいという大阪府首脳の叩頭の姿勢に、吉本興業が深く理解を寄せ、渾身の気概を以って協力を惜しまなかったのが、この経過の真の姿だった。
大阪・難波千日前という繁華街で館を構える以上、それ相当の経費が伴うことは当然であり、しかも今後建物の老朽化にともなうメンテナンスに要する経費が増えることは当然だから、現状の家賃ベースで維持するだけでも相当な負担が、家主側に生じていくことは当たり前のことだ。
拙著の中で触れた国立民族学博物館の石毛直道館長(当時)の言葉が、今でも甦る。
<ちょっと財政が苦しくなると、すぐ打ち出されるのが文化の切捨てなんです。演芸のようなものは、一番下の文化だと思われがちですが、ほんとうは人間の生活文化だけに、他の高尚なものより、もっと大切なものです。
それが都市の個性を作っているわけですが、他の予算に比べて文化予算は微々たるもの。これからは文化というものに力を入れ、すぐには役立たないものの、文化を大切にすることこそが尊敬される国とか自治体と言われるようになる筈です>。
「笑い」をテーマにした博物館は世界に5ヶ所あるが、芸人のビデオテープや遺品を集め、後進のためのホールを設営しているのは、大阪にしかない。しかも大阪府の公共施設だから、遺品を寄付、私蔵品を寄贈したいと願う府民が、この「ワッハ上方」を支えているのである。「ワッハ上方」の収蔵品は、年毎に増え今では5万7千点という。
橋下知事は、極めて合理的な思考回路の持ち主のようだ。財政再建に死活を求める橋下府政には拍手を送ることに躊躇を惜しむものではない。しかし大阪文化が渇望しているこの「ワッハ上方」の存続については、財政改革とは別次元のテーマとして、知事の合理的思考を妨げるものになるとは思わない。そう信じたい。
なお「ワッハ上方を作った男たち」紹介は←をクリック
ワッハ上方(大阪府立上方演芸資料館)が、新生橋下徹大阪府知事の下で、府行財政改革にからみ、「存続」が危ぶまれている。
橋下知事は、破綻同然の府財政を何とか再建するには、「収入の範囲内で予算を組む」しかないと、就任初府議会で宣言。そのためには府職員の人件費の大幅削減は勿論のこと、公共事業の見直しや図書館以外の府立施設の撤廃・売却などの検討をすると言い放った。
歴代知事が手を付けなかった財政改革に大鉈を奮い、明るい大阪府の未来を築きたいという決意表明には、新知事の熱意としてそれなりに伝わってくる。
2月17日、新知事は行動を開始し、早速「ワッハ上方」を視察している。その際、「上方お笑い殿堂」の役割には一応の理解を示したという。だが、<日経新聞「先望鏡」(中沢義則編集委員)によると、超多忙な知事の情報不足もあって、運営の問題点に関する質疑は、とんちんかんだった>という。
大阪府は「ワッハ上方」が入居しているテナントビルの賃借料を年間2億8千万円支払っている。当然知事は「値引き交渉はどうなっているのですか」と訊いたらしいが、賃借値下げ交渉の窓口は大阪府生活文化部なのに、当事者能力のない視察先のワッハに問い質している。
就任ホヤホヤの橋下知事の脳裏の中に「高賃借料」だけが去来し、それ自体が存続可否の判断基準になっているのは分からない訳でもない。
しかしどうしてそんな高額な賃借料を払って「ワッハ上方」を大阪府が開設したのは何故か、その秘めたる経過を、知事が分かった上で結論を出してらいたいと願う府民は増えつつある。
さて筆者は、2006年5月に小説「ワッハ上方を作った男たち」(西日本出版社刊)を出版している。この「ワッハ上方」の発想が芽生えた昭和63年9月から、完成した平成8年11月14日までの10年余の間、この立ち上げに携わった男たちの思いと流した汗の軌跡のドキュメントだ。
そこで、拙著の中で触れた、府の財政に絡む「賃貸料」のことを、ここで改めて触れておきたい。
テナントビルの主・吉本興業は、当時の大阪府の「大阪伝統文化の象徴お笑い資料館」を作りたいとのたっての懇請に共鳴して、投資した金額は、土地取得費約100億円、ビル建設費約50億円の計150億円だった。無借金の健全経営だった吉本興業は、これをなんと自社の転換社債発行で賄っている。大阪府に一切頼らなかったのである。
当時の吉本興業は、営業収入でみると平成5年度160億円、平成6年度191億円、平成7年度212億円と業績を順調に伸ばしているものの、平成4年度148億円の営業成績とほぼ同額の資金をここで調達することは、信じがたい決断だったことは明らかだ。
さらに驚くべきことは、いわば大阪府のオーダーメイドともいうべき新築ビルへの「ワッハ上方」の入居に、「保証金・敷金」を一切要求せず、オフィスビルの家賃以下という破格の条件で、同「笑いの殿堂」を受け入れたことだ。
これは上方文化の保存と振興を図る公的施設としての機能を永続させたいという大阪府首脳の叩頭の姿勢に、吉本興業が深く理解を寄せ、渾身の気概を以って協力を惜しまなかったのが、この経過の真の姿だった。
大阪・難波千日前という繁華街で館を構える以上、それ相当の経費が伴うことは当然であり、しかも今後建物の老朽化にともなうメンテナンスに要する経費が増えることは当然だから、現状の家賃ベースで維持するだけでも相当な負担が、家主側に生じていくことは当たり前のことだ。
拙著の中で触れた国立民族学博物館の石毛直道館長(当時)の言葉が、今でも甦る。
<ちょっと財政が苦しくなると、すぐ打ち出されるのが文化の切捨てなんです。演芸のようなものは、一番下の文化だと思われがちですが、ほんとうは人間の生活文化だけに、他の高尚なものより、もっと大切なものです。
それが都市の個性を作っているわけですが、他の予算に比べて文化予算は微々たるもの。これからは文化というものに力を入れ、すぐには役立たないものの、文化を大切にすることこそが尊敬される国とか自治体と言われるようになる筈です>。
「笑い」をテーマにした博物館は世界に5ヶ所あるが、芸人のビデオテープや遺品を集め、後進のためのホールを設営しているのは、大阪にしかない。しかも大阪府の公共施設だから、遺品を寄付、私蔵品を寄贈したいと願う府民が、この「ワッハ上方」を支えているのである。「ワッハ上方」の収蔵品は、年毎に増え今では5万7千点という。
橋下知事は、極めて合理的な思考回路の持ち主のようだ。財政再建に死活を求める橋下府政には拍手を送ることに躊躇を惜しむものではない。しかし大阪文化が渇望しているこの「ワッハ上方」の存続については、財政改革とは別次元のテーマとして、知事の合理的思考を妨げるものになるとは思わない。そう信じたい。
なお「ワッハ上方を作った男たち」紹介は←をクリック
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